目標15陸の豊かさも守ろう 世界が抱える課題/問題
毎年世界でどれぐらいの森林が失われているかご存知でしょうか?
統計によりますと毎年1000万~1300万ヘクタールも森林が失われていると言われています。
これは、東京都が約22万ヘクタールですので、毎年東京都59個分の森林が失われているということになります。
では『木を切らなければいいのか?』というと、実はそうではありません。
元気な森林を守るには『木を使うこと』も大切なのです。
そのあたりをSDGs目標15『陸の豊かさも守ろう』を軸に考えていきます。
恵み深き木々の大切さ
そもそも、森林が破壊されるとどうなるのでしょうか?
まず挙げられるのが、温暖化の加速です。
木々は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収してくれます。
落ち葉も土壌の炭素を吸収する役割を担っており、温暖化の抑止には欠かさない存在です。
森林破壊は何につながる?
森林を必要以上に伐採することで、二酸化炭素の吸収源を失うと同時に、吸収していた炭素も排出してしまいます。
このまま温暖化が進行すると、2100年には2000年と比べて気温が平均4.8℃も上昇することが予測されています。
森林が持つ役割のもう一つ、災害抑止力があります。
木々が根を生やす土壌には、多数の隙間があり雨が降ると一旦そこに水が蓄えられます。
そして時間を掛けてゆっくりと川へ送り出されることで氾濫が起きるのを防いでくれています。
この貯水機能はダムのような役割を担っており、しばらく晴天が続いても川が枯れないのも森林のおかげであり、木々が多方面に根を生やすことは土壌をつなぎ土砂災害までも抑制してくれているのです。
森林が減少することで、土壌はこれらの機能を失い災害が起こりやすい土地になってしまいます。
森林が支える人々の生活
森林が減少することで、経済的にも大きな問題が発生します。
ここで挙げるのは、森林に生活を支えれれている人たちの存在です。
現在地球に暮らす16億人の人たちが、木材・紙・天然ゴム・燃料・肥料といった側面で森林によって生計を立てて暮らしています。
しかし雇用を生み出しているはずの森林の伐採が過剰になりすぎているために、生活の糧を失ってしまおうとしています。
また森に暮らす野生動物たちも森から追い出されてしまいます。
行き場を失ったゾウやトラは農民の生活の場に現れ、危険な害獣として殺されてきました。
森林減少の大きな原因が『違法伐採』です。
そしてそれは貧困からやむなく起こっているというのが現実です。
貧困地域の多くは農地を持てない人が多く、生活が困窮し生きるために許可なく森林を伐採し農地にしてきました。
地球規模での気候変動・干ばつ・乾燥化によるものよりも、自然の許容範囲を超える過放牧・過耕作などの活動によるものが森林破壊の90%を占めています。
森林をサステナブルに活用するには?
ではどうすればいいのか?
違法に森林を破壊している地域の人は有効な活用方法を知らないため、木を切り崩すしかしてこなかったという経緯があります。
例えばエチオピアでは、現金収入を得るために森林伐採が行われており、環境破壊が国内で問題視されてきました。
この問題を解決するために、ある企業が自然に発生しているコーヒー豆に着目し、エチオピアでコーヒー豆の生産を支援しています。
また適正な森林管理上で生産・製造され販売されている製品に対する認証制度があり、それを『FSC認証』と言います。
適切な環境保全や社会的利益だけではなく、持続可能な森林管理がされた木材にのみ与えられる認証です。
違法伐採された木材や木材製品の購入をやめることになり、とても効果があります。
意識して探してみると、私たちが何気なく購入している商品にもついていますので、是非意識してみてください。
森林を守るためには木を使うことも大事
冒頭でありましたが、森林を守るためには木を使うことも、とても大事になってきます。
実は森林というのは、長く存続させるためには育ちの悪い木を間引いて栄養を行き渡らせたりすることが重要です。
日本では特に60年~70年ほど前に植樹によって多くの人工林が誕生しましたが、海外からの安い木材を大量に輸入することが一般的となったため、管理が適切にされなくなり、多くの人工林が荒れた状態で放置されてしまっています。
荒れた状態の森林はいずれ荒廃してしまい、大事な資源をムダにすることにつながります。
木製の製品はプラスティックと違い、再生可能で持続的に使い続けられます。
木を使うことは、森林を適切に守る人の生活を支えることにもつながり、ひいては世界中の森林を守ることにはつながります。
自然の叡智を永続的に使い続けるためにも、SDGs目標15『陸の豊かさも守ろう』を考えながら適切な資源の使用方法とは何かを感じるきっかけになればと思います。
☟その他世界の現実:数値で見る課題・問題
- 人間の活動によって自然のバランスが崩れ、世界の種の絶滅リスクが過去30年で約10%悪化している。
- 絶滅の危機に瀕している種は3万1000種以上に及び、レッドリストインデックス(0~1の範囲で示され0はすべてがの種が絶滅したことを示す)は1990年の0.82から2020年には0.73まで低下している。
このような課題/問題を解決するためにSDGs目標15陸の豊かさも守ろうではどのようなターゲット・指標が設定されているのでしょう?
目標15陸の豊かさも守ろう ターゲットと指標
目標15陸の豊かさも守ろうでは、12個のターゲット(具体的な取り組み内容)と、14個の指標(達成・未達成の判断基準/項目)が設定されています。
それでは、どんなターゲットや指標があるか見ていきましょう。
↓初めは数字表記のターゲット及び指標
ターゲット(具体的な取り組み内容) | 指標(達成・未達成はどんな指標で判断?) |
15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する |
15.1.1 土地全体に対する森林の割合 |
15.1.2 陸生及び淡水性の生物多様性に重要な場所のうち保護区で網羅されている割合(保護地域、生態系のタイプ別) |
15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に大幅に増加させる |
15.2.1 持続可能な森林管理における進捗 |
15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する |
15.3.1 土地全体のうち劣化した土地の割合 |
15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う |
15.4.1 山地生物多様性のための重要な場所に占める保全された地域の範囲 |
15.4.2 山地グリーンカバー指数 |
15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる |
15.5.1 レッドリスト指数 |
15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公平かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する |
15.6.1 利益の公平かつ衡平な配分を確保するための立法上、行政上及び政策上の枠組みを持つ国の数 |
15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する |
15.7.1 密猟された野生生物又は違法に取引された野生生物の取引の割合 |
15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海域生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入しさらに優先種の駆除または根絶を行う |
15.8.1 外来種に関する国内法を採択しており、侵略的外来種の防除や制御に必要な資金等を確保している国の割合 |
15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む |
15.9.1 生物多様性戦略計画2011-2020の愛知目標の目標2に従って設定された国内目標に対する進捗 |
↓ここからアルファベット表記のターゲット及び指標
15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う |
15.a.1 生物多様性及び生態系の保全と持続可能な利用に係るODA並びに公的支出 |
15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する |
15.b.1 生物多様性及び生態系の保全と持続可能な利用に係るODA並びに公的支出 |
15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力の対する世界的な支援を強化する |
15.c.1 密猟された野生生物又は違法に取引された野生生物の取引の割合 |
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